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2020年4月13日
ついに本家『ウォーキング・デッド(TWD)』とクロスオーバーを果たす『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド(FTWD)』シーズン4のレンタルが4月24日にリリース。そこで、改めてこの2作の共通点と相違点を整理してみた。2作の世界観は同じだが、ドラマにはそれぞれ別の面白さがある!
Cliff Curtis as Travis, Kim Dickens as Madison, Frank Dillane as Nick and Keith Powers as Calvin – Fear the Walking Dead _ Season 1, Episode 1 – Photo Credit: Justin Lubin/AMC
『TWD』と『FTWD』は、登場人物たちが生きている世界が同じだ。2作とも、原作は同じロバート・カークマンによる同名コミックなので、世界の状況などの各種設定が共通で、歩き回る死者=ウォーカーたちの、動きが遅い、頭部を破壊すると倒せる、大きな音がすると寄ってくるなどの性質も同じだ。
そして、描かれる時期も同じ。『TWD』シーズン1第1話の冒頭で主人公リックはウォーカーのいない世界にいて、銃撃されて昏睡状態になり、目覚めると世界はウォーカーで溢れている。そのリックが昏睡状態だった時期、つまりウォーカーが少しずつ増えていく時期が『FTWD』のシーズン1で描かれる。2作の登場人物たちは、同じ時間を生きているのだ。
Mercedes Mason as Ofelia Salazar – Fear the Walking Dead _ Season 3, Episode 8 – Photo Credit: Richard Foreman, Jr/AMC
2作品で描かれる場所は別で、遠く離れている。場所が違えば、気候も暮らしぶりも、住んでいる人々の気質も違う。だからこの2作は、同じ世界を描きつつ、それぞれ別の雰囲気が味わえるドラマになっているのだ。
『TWD』はずっと米の東海岸側が舞台。ジョージア州アトランタから北上して、バージニア州のワシントンDCの郊外へと移動していく。温暖な日々もあるが、寒い冬がやってくる場面もある。
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それとは対照的に『FTWD』は米の西海岸側から南下する。カリフォルニア州ロサンゼルスから始まり、太平洋上を経てメキシコへ、そしてテキサスへと移動する。ずっと気候は暑く、砂漠のような場所もある。特に、“海の上”がどうなっているのかは、『TWD』ではまったく描かれなかったもの。海上だから起きる出来事が新鮮だ。
Alycia Debnam Carey as Alicia, Frank Dillane as Nick, Kim Dickens as Madison, Cliff Curtis as Travis, Elizabeth Rodriguez as Liza, Lorenzo James Henrie as Chris, Ruben Blades as Daniel Salazar, Patricia Reyes Spíndola as Griselda Salazar and Mercedes Mason as Ofelia – Fear The Walking Dead _ Season 1, Gallery – Photo Credit: Frank Ockenfels 3/AMC
『TWD』の主要登場人物は、ほぼ大人ばかり。子供は主人公リックの息子カールがいるだけで、ティーンエイジャーはあまり登場しない。家族も少なく、リックの一家とマギーの一家くらい。ドラマも、それぞれの個人の話が中心だ。
一方、『FTWD』は家族がいくつも登場して、それぞれの家庭の親たちと10代の子供たち、2つの世代が同等に描かれる。各親子の関係性もそれぞれ違う。だから、家族ならではのドラマがたっぷり。そして、ティーンエイジャーの少年少女たちが、親世代とは別の価値観で独自に行動していくのも、『TWD』にはなかった部分だ。
ちなみに、この2作は「登場人物と原作の関係」もちょっと違う。『TWD』の登場人物のほとんどは(TVでは原作とは違う行動をすることも多いが)原作コミックに登場する。しかし、『FTWD』の登場人物は、誰も原作コミックには登場せず、ドラマ・オリジナルのキャラクターなのだ。
Noah Beggs as Peter Dawson and Cliff Curtis as Travis – Fear The Walking Dead _ Season 1, Episode 3 – Photo Credit: Justina Mintz/AMC
『TWD』の舞台は、無人になってしまった場所が多く、物資も欠乏していて、少人数の集団が多く、別の集団に遭遇すると、生き残るために殺し合わなくてはならないこともよくある。なにしろ、リックが集団に新人を受け入れる時の定番質問で「人間を何人殺した?」「なぜ殺した?」と聞く世界だ。
しかし『FTWD』は、資産家の登場人物がいたり、まだ物資があるホテルがあったり、ある程度多数の人間がいる集団も多くて、すぐには殺し合いにはならないことが多い。しかし、人間の数が増えればさまざまな人間がいて、そこで生きていくためには、複雑な駆け引きや策略が必要になり、そうしたドラマが描かれていく。そして、家族ドラマでもあるので、危機は家の外だけではなく、家の中にもあるのだ。
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Robert Kirkman at arrivals for AMC Presents Live Special Edition of THE WALKING DEAD”s TALKING DEAD, Hollywood Forever Cemetery, Los Angeles, CA October 23, 2016. Photo By: Priscilla Grant/Everett Collection
クリエイターのクレジットは、『TWD』はフランク・ダラボン、『FTWD』はロバート・カークマンと別人だが、カークマンはこの2作の原作コミックの作者で、『TWD』には最初から製作総指揮で参加している。つまり、どちらも基本的にはカークマンの世界。原作者カークマンが『TWD』でやれなかったことをやったのが『FTWD』だという見方も可能だ。
そして、監督も共通。マイケル・E・セトラゼミスなど2作の両方を手掛けている監督が少なくないのだ。シャラット・ラジュなど、先に『FTWD』を監督してから『TWD』を手掛けた監督もいる。中には、マグヌス・マルタンスのように、『FTWD』を監督した後、スピンオフ・シリーズ第2弾『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド(原題)』に参加した監督もいる。
さらに注目なのは『FTWD』には、話題作に抜擢された監督2人が参加していること。まずひとりは、『スター・ウォーズ』初の実写ドラマ・シリーズ「マンダロリアン 」に参加し、オビ・ワン・ケノービが主人公のシリーズの監督に抜擢されたデボラ・チョウ。もう一人は、マーベルのTVシリーズ『ファルコン・アンド・ウィンター・ソルジャー(原題)』の監督に決定したカリ・スコグランド。『FW』には今、勢いに乗っている監督が参加しているのだ。
文/平沢薫
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